2024年4月5日金曜日

円周上の点がつくる三角形(2)


円周上でランダムにとった3点でつくられる三角形が鋭角三角形になる確率は、1/4ということであった。
以前の結果を使って結論を出したが、この「円周上のランダムな3点による三角形が鋭角三角形になる確率」の求め方について、改めて整理しておこう。

中心が原点にある単位円に、3点A,B,Cをとって三角形を描く。
点Aは、座標(1,0)に固定する。
点Bは、上半円周の任意の点とし、弧AB=a とする。
点Cは、円周上の任意の点とし、弧ABC=b とする。


点Bが、0<a<π のとき、点Cが、π<b<π+a を満たせば(赤色の弧の上にあれば)、鋭角三角形になる。
赤色の弧の長さは、弧ABの長さ(a)と同じなので、鋭角三角形になる確率は、a/(2π) となる。
この a が 0からπまで変化するときの f(a)=a/(2π) が全体のどれだけの割合になるかを調べればよい。


 f(a)=a/(2π) を(0→π)で積分して、πで割る(青色の面積を底辺で割る)ことで、
{[(1/(4π))a^2](0→π)}÷π=(π/4)÷π=1/4 すなわち、確率 1/4 (=0.25)が得られる。

新たに条件を加えて、次のような問題をつくってみた。


点A,Bは上記と同じとし、点Cは、「弧ABを除く円周上に配置する」こととする。この場合、「鋭角三角形になる確率」はいくらか。
上記と同じく、点Cが、π<b<π+a を満たせば(青色のエリアにあれば)よいわけだが、点Cを弧AB上(赤色のエリア)に置いてはいけないので、鋭角三角形になる確率は、a/(2π-a) と表せる。
すなわち、 f(a)=a/(2π-a) の積分から確率を求めることになる。


2π-a=x とおいて置換積分すると、(x-2π)/x を(2π→π)で積分することになり、[x- 2πlogx](2π→π)= 2π log 2-π ≒ 1.212
これを π で割ればよいので、求める確率は、2 log 2-1 ≒ 0.386 となる。

2024年4月4日木曜日

円周上の点がつくる三角形(1)


円周上に点をとる作業を進めてきたが、これに関連した問題。
円周上にランダムに3点をとり、これらを頂点とする三角形をつくるとき、これが鋭角三角形、直角三角形、鈍角三角形となる条件について調べてみた。


原点を中心とする半径1の単位円において、座標(1,0)に点Aを固定し、上半円の適当な位置に点Bをとる。このとき、第3点目の点Cのとり方によって、鋭角三角形(青色)、直角三角形(赤色)、鈍角三角形(緑色)のいずれもつくることができる。

初めに、2点A,Bを固定したときの、直角三角形になる場合を考えると、


∠ABCと∠BACが直角になる2種類の直角三角形をつくることができる。ACまたはBCが中心Oを通る(直径になる)ように、点Cをとればよい。
そして、鋭角三角形または鈍角三角形となる条件は、このポイントが分岐点となる(この分岐点をR1、R2とする)。

2点A,Bを固定したときの、鋭角三角形は、上記の分岐点R1とR2を端点とする弧(半円より小さいもの、弧ABを含まない側)の上に、点Cをとればよい。


逆に、鈍角三角形は、弧R1BAR2の上に、点Cをとればよいということになる。


点Aは固定したまま、点Bの位置を上半円の円周上で動かした場合、鋭角三角形と鈍角三角形の現れやすさを調べてみよう。


点Bを第1象限にとると、分岐点R2(直角三角形を形成する点)は第3象限に現れる。なお、R1は点Aを固定しているのでつねに定位置(座標(-1,0))にある。
点Bが点Aに近づくにしたがって、この青色のエリアは狭くなり、点BがR1に近づくにしたがって、青色のエリアは下半円全体に広がっていく。
そして、点Cが青色のエリアにあれば鋭角三角形、緑色のエリア(点A、Bをのぞく)にあれば鈍角三角形となることが分かる。

したがって、円周上にランダムにとった3点で作られる三角形が鋭角三角形になる確率を求めることは、弧R1R2の長さ(=弧ABの長さ)の平均が全円周に対してどれくらいの割合になるかを調べることと同じである。
円周上にランダムに2点をとったときの弧の長さの平均はすでに調べた通り、π/2 であった。
したがって、鋭角三角形になる確率は、(π/2)÷2π=1/4 となる。

ちなみに、鈍角三角形になる確率は、3/4 であり、直角三角形になる確率は、0(極めて珍しいこと)となる。

2024年4月3日水曜日

弦の長さとベルトランのパラドックス


これまでの「ランダムに引いた弦の長さ」の考察から「ベルトランのパラドックス」の確率を検証したい。

初めに、ベルトランのパラドックスについておさらいしておく。
半径が1の円にランダムに引いた弦の長さが√3以上になる確率について、


(1)円周上にランダムに2点をとって弦をつくったとき、確率は、1/3
(2)直径上にランダムな1点をとって弦をつくったとき、確率は、1/2
(3)円の内部にランダムな1点をとって弦をつくったとき、確率は、1/4

一方、「円の中にランダムに引いた弦の長さ」を調べてきた方法を整理すると、

(1)円周上に適当なに2点をとったとき(方法①②③)、弦の長さの変化は y=2sinθに従い、平均値は4/π(約1.27)


(2)直径上に適当な1点をとったとき(方法④)、弦の長さの変化は y=2√(2x-x^2) に従い、平均値はπ/2(約1.57)


(3)円の内部に適当な1点をとったとき(方法⑤)、弦の長さの変化は y=2√(1-(t/π))に従い、平均値は4/3(約1.33) ( tは打点を円周上にもつ円の面積に相等) 


これらについて、縦軸を弦の長さとしてスケールを合わせ、1つの座標平面にまとめてみると、次のようになる。
(1)変数θ  オレンジ y=2sin((π/2)x)
(2)変数x y=2√(2x-x^2) 
(3)変数t y=2√x


弦の長さが、√3よりも大きくなる(内接する正三角形の一辺より長くなる)ところは、それぞれ、
(1)オレンジ 0.66以上
(2)緑 0.5以上
(3)紺 0.75以上 になっていることが分かる。

すなわち、
(1)円周上に2点をとった場合、弦が√3より大きくなる確率は、1/3
(2)直径(半径)上に1点をとった場合、弦が√3より大きくなる確率は、1/2
(3)円の内部に1点をとった場合、弦が√3より大きくなる確率は、1/4 
となることが、弦の長さを調べた数式からも確かめられる。

2024年4月2日火曜日

ランダムに引いた弦の長さ(8)


方法5による、半径が1の円の内部にランダムにとった点Aをもとに引いた弦の長さは、平均 4/3 になるということであった。
前回とは違った方法で再検証してみたい。


円の内部にランダムに点を打つということなので、打たれた点の位置は2次元で考えることになる。
方法4の考え方では、中心からの距離 r によって、BC=2√(1-r^2) を r の関数として計算した。
今回は、rの代わりに、半径 r の円の内部の面積 πr^2 を変数として、
t=πr^2 にs=2√(1-r^2) を対応させ、rを媒介変数とする関数(s=f(t))を考える。
すなわち、πr^2=t とおいて、r^2=t/π とし、これを 2√(1-r^2) に代入すると、f(t)=2√(1-(t/π))  が得られる。

この関数をグラフに表すと、次のようになる。


t軸、s軸、s=f(t)で囲まれた部分の面積は、Integral{2√(1-(t/π))}(0→π)=[(-4/3)π(1-(t/π))^(3/2)](0→π)
=(4/3)π となる。これを π-0=π で割ると、4/3 となって、前回求めた値に一致する。

2024年4月1日月曜日

ランダムに引いた弦の長さ(7)


2次元上の点をもとに定義する弦BCの長さについて、この起こりやすさをどのように組み込めば、その平均を求めることができるか、を考える。


θ=0として、原点からの距離がrである点Aに対する弦BCの長さは、f(r)=2√(1-r^2) (0≦r≦1) で表せる。
点Aの選ばれやすさを、仮に点Aが属する円周の長さで表すことにして、g(r)=2πr とする。
y軸に f(r) の値をとり、z軸に g(r) の値をとって、これらの積による長方形の面積を、r方向(x軸)に積分すれば、立体の体積が求められる。これを底面積で割れば、高さ(f(r)、すなわち弦BCの長さ)の平均値が求められると考えた。

いま、次のように4分の1円の中で、点Aの位置を表すrを、点Sからスタートさせて、半径SO上を動かし、SA=rとして、そのときの線分AB(弦BCの半分)の長さの変化を考える。


y=f(r)のグラフ(0≦r≦1)は、次のようになる。


すなわち、r=0のとき、AB=0、r=1のとき、AB=1であり、f(r)=√(2r-r^2) と表せる。

また、z=g(r)のグラフ(0≦r≦1)は、次のようになる。


すなわち、r=0のとき、弧AT=π/2、r=1のとき、弧AT=0であり、g(r)=(π/2)(1-r) と表せる。

立体を表現するのは難しいが、これらの積を r 方向に積分すると、
Integral{√(2r-r^2)・(π/2)(1-r)}dr (0→1)=[(π/6)(2r-r^2)^(3/2)](0→1)=π/6
この立体の高さの平均を求めるために、底面積 π/4 で割ると、(π/6)÷(π/4)=2/3 となる。
弦の長さはABの2倍なので、2/3×2=4/3 (≒1.33) が、方法⑤による弦の平均値ということになる。
 

2024年3月31日日曜日

ランダムに引いた弦の長さ(6)


「円の中にランダムに引いた弦の長さ」について、また違った方法を考える。

(3)円の内部に適当な点をとり、その点が中点となるような弦の長さはどれくらいになるか。

⑤ 方法5
下図のように、中心が原点にある単位円の内部に適当な点Aをとり、OAに垂直な直線を引くとき、点Aを中点とする弦BCが引ける。円の内部にランダムな点をとった場合に、この弦BCの長さの平均を求めたい。


これまでとは異なり、点Aは2次元表記が必要になる。
点Aは、直交座標で、(x,y) (ただし、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x^2+y^2≦1)と表す方法もあるし、
極座標で、(r,θ) (ただし、0≦r≦1、0≦θ≦2π)と表す方法もある。ここでは極座標を用いて考える。

A(r,θ)を定めるとき、弦BCの長さは、2√(1-r^2) と表せる。θ は弦の長さには影響しない。
しかし、同じθ座標をもつOD上の点であっても、座標rが大きくなる(外周に近づく)と、その一周(点線)の長さが長くなることから、選ばれやすさも大きくなると思われる。


点Aと同じ半径rをもつ点の集まりは、2πrの長さの円周上の点であり、点A'と同じ半径r'をもつ点の集まりは、2πr'の長さの円周上の点であることから、点Aに対する点A'の選ばれやすさは、r':r といえるだろう。
点Aよりも内側の点が選ばれる確率(πr^2/π)に対して、点A'より内側の点が選ばれる可能性(πr'^2/π)は、r'^2:r^2 、すなわち、半径の比(r'/r)の2乗に比例するという言い方もできる。

2024年3月30日土曜日

ランダムに引いた弦の長さ(5)


引き続き、③と④の「確率測度の違い」について考える。


③の場合、CD=2sinθと表すことができて、θが 0→π/2 で変化するときのCDの長さの平均を求めた。
いま、第1象限と第2象限におけるBCの長さの平均を求めるとしたとき、
f(θ)=sinθで表される曲線とθ軸に挟まれた部分の面積をπで割れば、この山の高さ(BCの長さ)の平均が求められる。


上図のサインカーブの面積は 2 なので、ここから導かれるBCの長さの平均は、2÷π=2/π≒0.637 となる。(2倍すると、1.27)
円周上の点に着目してその変化を追うということは、動径の「θ」が変数になっている。

一方、④の場合、AB間の距離をxと置き直したとき、CD=2√(2x-x^2) と表すことができて、xが0→1で変化するときの長さの平均を求めた。


上記と同様に、第1象限と第2象限におけるBCの長さの平均を求めるとすると、
f(x)=√(2x-x^2) で表される曲線(半円)とx軸に挟まれた部分の面積を2で割れば、BCの平均が求められる。


半径が1の半円の面積は、π/2 なので、導かれるBCの長さの平均は、π/2÷2=π/4≒0.785 となる。(2倍すると、1.57)
半径(直径)上の点に着目してその変化を追うのは、線分上の位置「x」が変数になっているということだ。

③と④のグラフの曲線は、縦軸においては、0→1 の同様の変化を表しているわけだが、横軸の動きの違いによって、サインカーブと半円のカーブに描き分けられているともいえる。
したがって、③のグラフの、縦軸はsinθの値(そのまま)で、横軸をθでなく、1-cosθ をとるようにプロットするならば、それは、④の半円のカーブを描くことになる。

2024年3月29日金曜日

ランダムに引いた弦の長さ(4)


求めた弦CDの平均値は、③で「4/π」、④で「π/2」となり、これは確率測度の違いによるものということであった。

だが、③と④のどこに違いがあるかについて説明するのは難しい。これについてもう少し考えてみよう。
下図のように、まず円周を等間隔に区切って点を打つ。そしてこの点を通りx軸に垂直な直線を引いてみると、これらの平行線は等間隔でなく、点Aに近いところで、平行線は密になっている。


円周上で点を動かすことによる弦の数え方と、半径上の点を動かしてつくった弦の数え方の違いを、この図は表しているといえるだろう。この疎密というのが、測度の違いを表しているのではないか。

①②③の方法は、少し見方は異なっているが、いずれも動径の動きを角度で表して円周上の点を均等に押さえていた。
たとえば、①の方法では、動径OBの端点Bと定点Aを結んで、弦ABの長さを考えた。


いま、円周上に15°刻みで24個の点を打ち、点Aと上半円上の点を結ぶ12本の弦の長さを計算すると、
2sin7.5°, 2sin15°, 2sin22.5°, 2sin30°, 2sin37.5°, 2sin45°, 2sin52.5°, 2sin60°, 2sin67.5°, 2sin75°, 2sin82.5°, 2sin90° となる。これらの近似値を求めると、0.26 , 0.52 , 0.77 , 1.00 , 1.22, 1.41 , 1.59 , 1.73 , 1.85 , 1.93 , 1.98 , 2.00 となって、
これら12本の弦の長さの平均は、1.35 となる。

一方、④の方法は、半径(または直径)上の点の位置に注目し、その線分上の点を均等に押さえていた。
すなわち、下図のように、半径OAに垂直な直線を一定間隔で平行移動させて弦CDの長さを考えた。


上の場合と同じように、半径を6等分する間隔で引いた平行線によってできた12本の弦の長さを計算してみると、
2√(1-(5/6)^2) , 2√(1-(4/6)^2) ,2√(1-(3/6)^2) , 2√(1-(2/6)^2) , 2√(1-(1/6)^2) , 2√(1-(0/6)^2) , 2√(1-(-1/6)^2) , 2√(1-(-2/6)^2) , 2√(1-(-3/6)^2) , 2√(1-(-4/6)^2) , 2√(1-(-5/6)^2) , 2√(1-(-6/6)^2) となる。これより近似値は、1.11 , 1.49 , 1.73 . 1.89 , 1.97 , 2.00 , 1.97 ,  1.89 , 1.73 , 1.49 , 1.11 , 0.00 となって、
これら12本の弦の長さの平均は、1.53 となる。 

ざっくりと有限の本数で比較してみた場合、④の方法の方が平均値は大きくなりそうである。無数の線を引く場合には状況が違ってくるだろうから、たかだか12本程度の比較では十分とはいえないのだが。

2024年3月28日木曜日

ランダムに引いた弦の長さ(3)


引き続き、円の中にランダムに引いた弦の長さを調べる。

(2)半径(直径)上に適当な点をとるとき、その点を通り半径に垂直な弦の長さはどれくらいになるか

④ 方法4
下図のように、中心が原点にある単位円の半径OA上に適当な点Bをとり、Bを通りOAに垂直な弦CDの長さに注目する。


定点A(1,0)、動点B(x,0) とすると、点Cの座標は、(x,√(1ーx^2))と表せ、CD=2√(1ーx^2) となる。
点Bを、0≦x≦1 で動かすときのCDの長さの平均値(期待値)を求めるためには、
2√(1ーx^2) を 0→1 の範囲で積分すればよい。


つまり、上のグラフは、f(x)=2√(1ーx^2)(0≦x≦1)を示すが、x軸、y軸、f(x)で囲まれた面積は、
x=sinθ とおいて置換積分して、2((cosθ)^2)・cosθ=1+cos(2θ)  を 0→π/2 で積分することになり、[θ+(1/2)sin(2θ)]( 0→π/4)=π/2 となる(半円の面積)。
これを (1ー0=1) の範囲で割って、その平均値は、π/2 およそ、1.57 となる。

③と④を比べてみよう。


③では、∠COA=θによって、弦CD=2sinθ と定義し、0≦θ≦π/2 の範囲でその変化を扱い、
④では、点Bの座標をxとして、弦CD=2√(1ーx^2) と定義し、0≦x≦1 の範囲でその変化を扱った。
どちらも、右半円の領域で、CDの長さを0から2まで変化させていることに変わりないのだが、
③では、平均値が、4/π(≒1.27)
④では、平均値が、π/2(≒1.57) という違いが現れた。
これは、円周上の点の集合を1(全体)としたものと、半径上の点の集合を1(全体)としたものの違い(確率測度の違い)によると考えられる。よく似たアプローチで解いているが、測度が異なると結果(平均の長さ)も異なるのである。

2024年3月27日水曜日

ランダムに引いた弦の長さ(2)

 
(1)円周上にランダムに2点をとるとき、2点間の距離はどれくらいになるか、の続き

③ 方法3
始線OAと動径OBのなす角をθとしつつ、弦の端点として点Aを使わずに、OAに垂直な線分BCによって、弦を定める。
この場合、ランダムとった2点としてはこれまで通り、A,B なのだが、A,B によって必然的に定められた点Cを用いて、BC間の距離を測るといった方法をとっている。


OB=1より、BC=2sinθと表せるので、前回の「② 方法2」と同じように、BCの長さについて、θ を 0→π/2 の範囲で積分して、π/2で割る作業を行う。
その平均値は、2÷(π/2)=4/π およそ、1.27 となる。

②と③を比べてみると、


②において、接線と弦のなす角がθのとき、∠AOB'(=2θ)の対辺AB'の長さを考えたが、これは、③における、∠BOC(=2θ)の対辺、すなわちOAに垂直な線分BCの長さに相当することがわかる。

このように、円周上にランダムに2点をとるとした考え方だけでも、いくつかの方法があるのだが、基本的に、動径OBを回転運動させ、点Bの経路である半円周を「1」とした確率(期待値)を扱っているという点で共通である。

さらに、点Bに対して、y軸に垂直な弦をとるような設定もできる。この場合、BCはこれまでとは違って、AB'に一致しない。しかし、下図より、BC= 2cosθとなることから、θ を 0→π/2 で積分して、π/2で割れば、同じ結果が得られることがわかる。


2024年3月26日火曜日

ランダムに引いた弦の長さ(1)


いよいよ「ベルトランのパラドックス」に関わる「円にひいた弦」について考えていこう。
円の中にランダムに引いた弦の長さはどれくらいか、その弦の長さの平均値(期待値)を求めようというものである。
まず初めに「ランダムに引く弦」をどのように定義するか、を明らかにしておく必要がある。
いくつかの方法があるので、順に調べてみたい。

(1)円周上に適当な2点をとるとき、2点間の距離はどれくらいになるか。

① 方法1
下図のように、原点を中心とする半径1の円を描き、点A(1,0)を固定して、適当な点B(x,y)までの距離を測ることを考える。
点Bは上半円の円周上にあるものを考えれば十分であろう。


この場合、点Bの座標は、始線OAと動径OBのなす角θを用いて、(cosθ,sinθ) と表せるので、
AB=√((1ーcosθ)^2+(sinθ)^2) 
  =√(1-2cosθ+(cosθ)^2+(sinθ)^2)
  =√(2(1ーcosθ))=√(4・(sin(θ/2))^2)=2sin(θ/2) と表せる。


点Bを、0≦θ≦πで動かすときのABの長さの平均値(期待値)を求めればよいので、
2sin(θ/2) を 0→π で積分して [-4cos(θ/2)]( 0→π)=4、これを (πー0) の範囲で割ればよいから、
その平均値は、4÷π=4/π およそ、1.27 となる。

② 方法2
①のときと同様に、原点を中心とする半径1の円を描き、点A(1,0)を固定して、適当な点B(x,y)までの距離を測る。
ただし、点Aにおける接線ATと弦ABのなす角θを0からπ/2まで変化させるときの点Bの移動を考えている。


この場合、中心Oから弦ABに下ろした垂線の足をHとすると、∠TAB=∠AOH (ともに90°-∠OAB)であり、
OA=1 なので、AH=sinθ、すなわち、AB=2sinθ となる。


2sinθ を 0→π/2 で積分して、[-2cosθ)]( 0→π/2)=2、これを (π/2ー0) の範囲で割ればよいから、
その平均値は、2÷(π/2)=4/π およそ、1.27 となる。

①と②を比べてみると、


接弦定理より ∠TAB=∠ACB、円周角の定理より ∠AOB=2∠ACB がいえる。
①の考え方を使うと、θ=φ/2 より、点Bの座標は、(cos(2θ), sin(2θ)) と表せるので、AB=2sinθ が導ける。
つまり、点Aのまわりに線分ABを回転させる考え方と、点Oのまわりに線分OBを回転させる考え方は同じということがわかる。

2024年3月25日月曜日

円周上の3点がつくる弧の長さ


円周上の2点の場合は簡単だったので、次に、円周上にランダムに3点をとるとき、いずれかの2点を結ぶ弧のうち、一番短い弧の長さはどれくらいか、を考える。

前回の2点の場合と同じく、単位円を用いて、弧の長さをその弧に対する中心角の大きさで扱うものとする。また、点Aを図のように固定した上で、点Bは上半円の円周上にある場合について考えれば十分であろう。

1点目のAを下図のように固定し、2点目のBに対する動径OBの回転角度をθとする。3点目のPの位置が下図の色分けされた弧にある場合をそれぞれ考えてみよう。


① 弧AB(赤色)上にあるとき、最短の弧の長さは、0から a/2 の値をとる。
② 弧BC(青色)上にあるとき、最短の弧の長さは、0から a の値をとる。
③ 弧AD(オレンジ)上にあるとき、最短の弧の長さは、0からa の値をとる。
④ 弧CED(緑色)上にあるとき、最短の弧の長さは、a(弧AB)となる。
なお、図中の点Eは、弧CD(緑色)の中点である。

点Pの移動による最短の弧の長さの変化を図示すると次のようになる。
ただし、緑色の弧が存在するのは、動径OBの回転角度θが、0≦θ<(2/3)π の範囲に限られる。


0≦θ≦(2/3)π における最短の弧の長さの平均(f(a))は、青色の面積を全体の2πで割ることで求められる。
f(a)={(a/2)^2+a^2+2a(π-(3/2)a)}÷(2π)={2πa-(7/4)a^2}÷(2π)=a-(7/(8π))a^2
a の値を 0から (2/3)π まで変化させたときの平均は、この f(a) を a で積分して、 (2/3)π で割ればよい。
a-(7/(8π))a^2 を (0→(2/3)π) で積分すると、
[(1/2)a^2-(7/(24π))a^3](0→(2/3)π)=(11/81)π^2
よって、{(11/81)π^2}÷(2/3)π=(11/54)π が求められた。

さて、θが(2/3)πに近づくにしたがって、4色に色分けた上図の緑色の弧は小さくなる。そして、θ=(2/3)π のとき、C,D,Eは一致し、緑色の弧は消える。このとき、赤、青、オレンジの弧の長さはすべて  (2/3)π の長さになり、これが求める弧の長さの最大値となる。


さらに(2/3)π<θ≦π の場合を考えると、弧ABと同じ長さの弧BCと弧ADは重なり合うことになるので、弧BDCAを2等分し、弧BE(青色)と弧AE(オレンジ)に分けて、以下のように整理できる。


① 弧AB(赤色)上にあるとき、最短の弧の長さは、0から a/2 の値をとる。
② 弧BE(青色)上にあるとき、最短の弧の長さは、0から π-(a/2) の値をとる。
③ 弧AE(オレンジ)上にあるとき、最短の弧の長さは、0からπ-(a/2) の値をとる。

点Pの移動による最短の弧の長さの変化を図示すると次のようになる。


(2/3)π<θ≦π における最短の弧の長さの平均(f(a))は、青色の面積を全体の2πで割ることで求められる。
f(a)={(a/2)^2+(π-(a/2) )^2}÷(2π)={(1/2)a^2-πa+π^2}÷(2π)=(1/(4π))a^2-(1/2)a+(1/2)π
a の値を (2/3)π からπ まで変化させたときの平均は、この f(a) を a で積分したものを (π/3) で割ればよい。
(1/(4π))a^2-(1/2)a+(1/2)π を ((2/3)π→π) で積分すると、
[(1/(12π))a^3-(1/4)a^2+(1/2)πa] ((2/3)π→π) =(7/81)π^2
よって、{(7/81)π^2}÷(π/3)=(7/54)π が求められた。

したがって、点Bが上半円のどこかに位置する(動径OBのなす角θが0からπの範囲にある)とき、3点A,B,Pがつくる最短の弧の長さは、上記2つの平均値(期待値)の和と考えられるので、(11/54)π+(7/54)π=(18/54)π=π/3 となる。

2024年3月24日日曜日

円周上の2点がつくる弧の長さ


線分上の2点間の距離の考えを円周上に拡張してみる。
円周上にランダムに2点をとるとき、2点を結ぶ短い方の弧の長さはどれくらいか、を考える。

ランダムな2点がつくる弧の長さの平均を求めるということだ。
原点を中心とする単位円上において、片方の点Aを固定して、点Bを円周に沿って動かすとき、弧ABの長さは動径OBが回転した角度θに等しい。


短い方の弧を選ぶので、上半円のみで考えると、角度θが0からπまで変化するときの弧の長さθの平均値(期待値)を求めればよいので、
f(θ)=θ の積分(0→π)を計算すると、[(1/2)θ^2](0→π)=(1/2)π^2
これを π-0=π で割って平均をとると、θ=π/2 となる。

これを図で表すと、青い図形の面積を底辺の長さで割ったものと考えられる。


つまり、円周上のランダムな2点がつくる弧の長さの平均は π/2 である。半円周は、その中点でバランスをとっている。

2024年3月23日土曜日

線分上のランダムな2点間の距離


標本が無限集合である例を考えていくのに、まずは次のような問題をとりあげる。
長さが1の線分上に、ランダムな2点をとるとき、2点間の距離(期待値)はどれくらいになるか、を考える。

数直線を0から1までで切り取った線分OAをについて、
第1点目の点をPとして、数直線上の適当な座標 x に位置づける。

(このとき、ランダムに置いた第1点の座標 x の平均は、1/2 になる。)

次に、第2点目の点をQとして、同じ線分OA上の適当なところに配置すると、PQ間の距離は次のようになる。


① QがOP上にあるとき、PQ間の距離は、0から x までの値をとる。
② QがPA上にあるとき、PQ間の距離は、0から 1-x までの値をとる。

点Qの移動によって、PQ間の距離の変化は次のように図示することができる。


つまり、点Pの座標を x としたとき、そのときのPQ間の距離の平均値(期待値)は、この青い部分の面積を底辺で割ったものになるので、
{(1/2)x^2+(1/2)(1-x)^2}÷(1-0)=x^2-x+1/2 となる。

ここで、点Pの座標 x が、0から1 までをランダムに変化すると考えて、
f(x)=x^2-x+1/2 とおいて、f(x)を 0から1 まで積分して、全体の 1 で割れば、PQの一般的な距離の平均が求められるだろう。


つまり、先ほどと同様に、f(x)=x^2-x+1/2 とx軸で挟まれた青い部分の面積を底辺で割ることで、高さ(PQ間の距離)の平均値(期待値)が算出できることになる。
すなわち、x^2-x+1/2(0→1)をxで積分して、
[(1/3)x^3-((1/2)x^2+(1/2)x](0→1)=1/3-1/2+1/2=1/3 となる。