いよいよ「ベルトランのパラドックス」に関わる「円にひいた弦」について考えていこう。
円の中にランダムに引いた弦の長さはどれくらいか、その弦の長さの平均値(期待値)を求めようというものである。
まず初めに「ランダムに引く弦」をどのように定義するか、を明らかにしておく必要がある。
いくつかの方法があるので、順に調べてみたい。
(1)円周上に適当な2点をとるとき、2点間の距離はどれくらいになるか。
① 方法1
下図のように、原点を中心とする半径1の円を描き、点A(1,0)を固定して、適当な点B(x,y)までの距離を測ることを考える。
点Bは上半円の円周上にあるものを考えれば十分であろう。
この場合、点Bの座標は、始線OAと動径OBのなす角θを用いて、(cosθ,sinθ) と表せるので、
AB=√((1ーcosθ)^2+(sinθ)^2)
=√(1-2cosθ+(cosθ)^2+(sinθ)^2)
=√(2(1ーcosθ))=√(4・(sin(θ/2))^2)=2sin(θ/2) と表せる。
点Bを、0≦θ≦πで動かすときのABの長さの平均値(期待値)を求めればよいので、
2sin(θ/2) を 0→π で積分して [-4cos(θ/2)]( 0→π)=4、これを (πー0) の範囲で割ればよいから、
その平均値は、4÷π=4/π およそ、1.27 となる。
② 方法2
①のときと同様に、原点を中心とする半径1の円を描き、点A(1,0)を固定して、適当な点B(x,y)までの距離を測る。
ただし、点Aにおける接線ATと弦ABのなす角θを0からπ/2まで変化させるときの点Bの移動を考えている。
この場合、中心Oから弦ABに下ろした垂線の足をHとすると、∠TAB=∠AOH (ともに90°-∠OAB)であり、
OA=1 なので、AH=sinθ、すなわち、AB=2sinθ となる。
2sinθ を 0→π/2 で積分して、[-2cosθ)]( 0→π/2)=2、これを (π/2ー0) の範囲で割ればよいから、
その平均値は、2÷(π/2)=4/π およそ、1.27 となる。
①と②を比べてみると、
接弦定理より ∠TAB=∠ACB、円周角の定理より ∠AOB=2∠ACB がいえる。
①の考え方を使うと、θ=φ/2 より、点Bの座標は、(cos(2θ), sin(2θ)) と表せるので、AB=2sinθ が導ける。
つまり、点Aのまわりに線分ABを回転させる考え方と、点Oのまわりに線分OBを回転させる考え方は同じということがわかる。
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