円周上の2点の場合は簡単だったので、次に、円周上にランダムに3点をとるとき、いずれかの2点を結ぶ弧のうち、一番短い弧の長さはどれくらいか、を考える。
前回の2点の場合と同じく、単位円を用いて、弧の長さをその弧に対する中心角の大きさで扱うものとする。また、点Aを図のように固定した上で、点Bは上半円の円周上にある場合について考えれば十分であろう。
1点目のAを下図のように固定し、2点目のBに対する動径OBの回転角度をθとする。3点目のPの位置が下図の色分けされた弧にある場合をそれぞれ考えてみよう。
① 弧AB(赤色)上にあるとき、最短の弧の長さは、0から a/2 の値をとる。
② 弧BC(青色)上にあるとき、最短の弧の長さは、0から a の値をとる。
③ 弧AD(オレンジ)上にあるとき、最短の弧の長さは、0からa の値をとる。
④ 弧CED(緑色)上にあるとき、最短の弧の長さは、a(弧AB)となる。
なお、図中の点Eは、弧CD(緑色)の中点である。
点Pの移動による最短の弧の長さの変化を図示すると次のようになる。
ただし、緑色の弧が存在するのは、動径OBの回転角度θが、0≦θ<(2/3)π の範囲に限られる。
0≦θ≦(2/3)π における最短の弧の長さの平均(f(a))は、青色の面積を全体の2πで割ることで求められる。
f(a)={(a/2)^2+a^2+2a(π-(3/2)a)}÷(2π)={2πa-(7/4)a^2}÷(2π)=a-(7/(8π))a^2
a の値を 0から (2/3)π まで変化させたときの平均は、この f(a) を a で積分して、 (2/3)π で割ればよい。
a-(7/(8π))a^2 を (0→(2/3)π) で積分すると、
[(1/2)a^2-(7/(24π))a^3](0→(2/3)π)=(11/81)π^2
よって、{(11/81)π^2}÷(2/3)π=(11/54)π が求められた。
さて、θが(2/3)πに近づくにしたがって、4色に色分けた上図の緑色の弧は小さくなる。そして、θ=(2/3)π のとき、C,D,Eは一致し、緑色の弧は消える。このとき、赤、青、オレンジの弧の長さはすべて (2/3)π の長さになり、これが求める弧の長さの最大値となる。
さらに(2/3)π<θ≦π の場合を考えると、弧ABと同じ長さの弧BCと弧ADは重なり合うことになるので、弧BDCAを2等分し、弧BE(青色)と弧AE(オレンジ)に分けて、以下のように整理できる。
① 弧AB(赤色)上にあるとき、最短の弧の長さは、0から a/2 の値をとる。
② 弧BE(青色)上にあるとき、最短の弧の長さは、0から π-(a/2) の値をとる。
③ 弧AE(オレンジ)上にあるとき、最短の弧の長さは、0からπ-(a/2) の値をとる。
点Pの移動による最短の弧の長さの変化を図示すると次のようになる。
(2/3)π<θ≦π における最短の弧の長さの平均(f(a))は、青色の面積を全体の2πで割ることで求められる。
f(a)={(a/2)^2+(π-(a/2) )^2}÷(2π)={(1/2)a^2-πa+π^2}÷(2π)=(1/(4π))a^2-(1/2)a+(1/2)π
a の値を (2/3)π からπ まで変化させたときの平均は、この f(a) を a で積分したものを (π/3) で割ればよい。
(1/(4π))a^2-(1/2)a+(1/2)π を ((2/3)π→π) で積分すると、
[(1/(12π))a^3-(1/4)a^2+(1/2)πa] ((2/3)π→π) =(7/81)π^2
よって、{(7/81)π^2}÷(π/3)=(7/54)π が求められた。
したがって、点Bが上半円のどこかに位置する(動径OBのなす角θが0からπの範囲にある)とき、3点A,B,Pがつくる最短の弧の長さは、上記2つの平均値(期待値)の和と考えられるので、(11/54)π+(7/54)π=(18/54)π=π/3 となる。