下図は、円に内接する正三角形を描いたものである。この円の中にランダムに弦を引いたとき、その弦の長さが正三角形の一辺の長さ(a)よりも長くなる確率はいくらか、を考える。
適当に直線を引いたとき、円で切り取られた線分(弦)は、ℓ1のようにaより短いものや、 ℓ2のようにaより長いものが現れる。
このようにランダムに弦を引いたとき、その弦の総数に対して、aよりも長くなる弦の本数の割合を求めようとしている。
Aさんは次のように考えた。
線を引くためのスタートになる点を円周上に設けて、この点から円の内部に線を引っ張っていく。
そうすれば、引いた線が三角形に重なるとき(線が赤色の角度内にあるとき) は、aより長く、三角形に重ならないとき (青色の角度内にあるとき) は、aより短くなり、これを区別すればよい。
ランダムに線を引ける角度は180度であるが、その内、赤い60度内に入れば、その線はaより長くなるといえる。
したがって、求める確率は、60/180=1/3である。
Bさんは次のように考えた。
円の直径を1本引いて、この直径上にランダムに点をとる。この点を通り、直径に垂直な直線を円内に引いて、その線分の長さを比べればよい。
そうすれば、点が円の中心に近く、2つの正三角形の底辺に挟まれたところにあるとき(線が赤矢印内にあるとき)の線は、aより長く、その外側(中心から離れた青色の矢印内にあるとき) は、aより短くなる。
円の中心は正三角形の重心に位置するので、青色の矢印と赤色の矢印の長さは、上青:赤:下青=1:2:1になる。
点のとり方はランダムなので、起こりやすさはこの長さの割合に等しいことから、求める確率は、2/4=1/2 になる。
Cさんは次のように考えた。
円の中にランダムに点をとり、この点から直線を引く。さまざまな線の引き方が考えられるが、置いた点が中点となる弦(点を通り半径に垂直に引いた弦、点を通る最短の弦)をとることにする。
これは、Bさんが直径上の点をとって確かめたように、中心から直径の1/4(半径の1/2)の距離内にあるときに、aより長い線が引けることを意味する。
つまり、もとの大円の中にランダムな点をとるとき、その点が内側のオレンジの円の内部に存在する確率が、aより長い線が引ける確率ということになる。
よって、(小円の面積)/(大円の面積)=π/4π=1/4。
同じ問題を解いて異なる解答が現れるのは受け入れがたいということで、ベルトランの「パラドックス」と呼ばれている。
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