円の中にランダムにひいた弦の長さが、内接する正三角形の一辺の長さaよりも長くなる確率について、次のような3つの意見に分かれたのだった。整理すると、
① Aさん
作業:円周上に適当な2点をとり、これを結んだものを「ランダムな弦」とする
比較対象:接線と弦のなす角(0°~180°)のうち、弦の長さがaよりも長くなる角度の範囲の割合を調べる
結果:確率は、60/180=1/3
作業:円周上に適当な2点をとり、これを結んだものを「ランダムな弦」とする
比較対象:接線と弦のなす角(0°~180°)のうち、弦の長さがaよりも長くなる角度の範囲の割合を調べる
結果:確率は、60/180=1/3
② Bさん
作業:1本の直径上に適当な点をとり、これを通り直径に垂直な線分を「ランダムな弦」とする
比較対象:直径上の点の位置(0~2r)のうち、弦の長さがaよりも長くなる位置の範囲の割合を調べる
結果:確率は、r/2r=1/2
③ Cさん
作業:円の内部に適当な点をとり、これが中点になるような線分(両端は円周上)を「ランダムな弦」とする
比較対象:円の内部(大円の面積)の点のうち、弦がaよりも長くなるような範囲(小円の面積)にある点の割合を調べる
結果:確率は、(π(r^2))/(4π(r^2))=1/4
異なるアプローチは、異なる結果を導くことになった。
誰の解答が正しいのだろうか。正しくない解答があるとすれば、どこに誤りがあるのだろうか。解答に誤りがないとすれば、なぜこのような異なる結果が導かれるのだろうか。
実は、標本が無限集合である場合、確率を考える対象をどのように設定するかによって違いが現れることがある。
全事象の確率が 1 であること、互いに排反な事象のどれか一つでも起こる確率はそれらの確率の和によって決まること、という原則に則って、測ろうとする事象を明確に定める必要がある。(「確率測度」という。)
たとえば、問題文にある「円の中にランダムにひいた弦の長さ」という表現を、「円周上に適当な2点をとり、結んだ弦の長さ」と置き換えたなら、Aさんの答が正しいことになる。円周上の2点を角度θで表し、角θが0→πにおいて起こる確率を1とする可算空間を考えて、その確率を定義したわけだ。
もし、「円の直径上に適当な点をとり、これを通り直径に垂直な弦の長さ」と定めるなら、Bさんの答が正しくなる。この場合、直径上の点の位置をxで表し、位置xが0→2rにおいて起こる確率を1としている。
さらに、「円の内部に適当な点をとり、これが中点になるような弦の長さ」と定めるなら、Cさんの答が正しくなる。この場合は、円の内部の点の集合全体を1としている。
ベルトランのパラドックスでは、弦の長さが内接正三角形の辺の長さよりも長くなる「確率」を扱っているが、標本が無限集合である場合の、線分の「長さ」(期待値)などについても、同じようなことが現れる。
引き続き、このような例を調べていきたい。
引き続き、このような例を調べていきたい。
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