2022年2月28日月曜日

折り紙で模様づくり(3)

(3)統合的・発展的に考える

折り紙模様の特徴や対称性にだけ注目する取り組みもありうるが、一歩踏み込んで、その折り方について調べてみようと思う。

小片の先が45°(8つ折りまたは4つ折りという)や30°(12折りまたは6つ折り)になるように折る折り方については、誰もが納得できると思う。しかし、36°(10折りまたは5つ折り)については、どうしてそうなるのだろうと疑問をもったり、別の方法もあるのかなと考えたりすることがありそうである。
昨日やった、10折り(5つ折り)の折り方は、本当に正しかったんだろうか。という疑問からスタートしよう。

(a)左4分の1の印の所に、長方形の角を重ねる方法(前回のやり方)

この折り方では、直角を挟む2辺が3:1である直角三角形をつくって、18°に近い折り目を求めて、そこから36°をつくった。
実は、tan θ=1/3 となるθは、約18.43°であり、わずかにズレ(2.4%)ている。

折り紙の10折り(5つ折り)の方法については、いくつか流儀のようなものがあって、ネットで紹介されているものには次のようなものがある。

(b)三角形に折って、4分の1の折り目をつける方法

(c)長方形に折って、辺の中点同士を重ねる方法

(b)(c)どちらも、(a)と同様、3:1の辺をもつ直角三角形を利用して、36°(18°)の近似値を導く手法となっている。
これ以外の方法で、10折り(または5つ折り)を紹介するものは見当たらなかった。そこで、これらとは異なる方法で、もっと正確な36°をつくる折り方がないか考えてみた。

(d)4分の1の線に折り紙の角を重ねる方法(その1)

①折り紙をEFで半分に折り、更にGHで半分に折る。
②点Cと点Gを重ねて、点線の折り目をつけ、GHとの交点をIとする。
③点Iと点Eを重ねたときの折り目を一点鎖線で表すと、色のついた角が、約72°になる、というもの。
<その理由>
△GBCが3:4:5の直角三角形で、また、△IJGと相似であることから、GIの長さが分かる。
GE/GI=8/25=0.32より、∠EIG≒17.74°(ズレ度合い1.4%)。よって、色のついた角は、約72°になる。

(e)4分の1の線に折り紙の角を重ねる方法(その2)

①折り紙をEFで半分に折り、更にGHで半分に折る。
②点Aと点Hを重ねて、点線の折り目をつけ、GHとの交点をIとする。
③点Iと点Gの中点をJとし、点Jと点Fを重ねたときの折り目を一点鎖線で表すと、色のついた角が72°になる、というもの。
<その理由>
三角形の相似を使うと、JHの長さが分かる。HF/JH=16/49≒0.3265より、∠FJH≒18.08°(ズレ度合い0.4%)になる。よって、色のついた角は、約72°になる。

(e)の方法で、かなり正確な値に近づけることができた。とはいえ、これまでのいずれの場合も、近似値にすぎない。
正確な36°を求める折り方はあるのだろうか。その話は、明日に。

2022年2月27日日曜日

折り紙で模様づくり(2)

(2)振り返る・視野を広げる

(a)ひろげた図形
・昨日の切った折り紙は次のようになった。予想した図形と同じ?違ってた?


ということで、ここからが本題。

(b)これらはどんな性質をもった模様かな。

・対称になってる。
・どんな対称?
・真ん中に鏡をおいても同じ。右と左が一緒。
・ほかにもある?
・回しても一緒。でも、それぞれ回して同じになる角度が違う。
・赤い四つ葉のクローバーは、90度、
 ピンクのさくらは、1/5周だから、72度、
 黄色い雪の結晶は、60度。

(c)じゃあ、図形のもとになった小片の折り目の角を調べてみよう。

・これだけじゃわからない。分度器があるといいな。
・分度器がないとき、どうして調べる?
・折り紙をひらいて、折り目を調べるのはどうかなあ。
・赤いのは、45度。一周が8等分されてる。
 ピンクは、36度。360度を10等分してる。
 黄色は、30度。今度は12等分だから。
・さっき、模様が同じになる回転の角度は、90度、72度、60度だったね?
・ちょうど半分になってる。
・線で区切られてる2枚ずつがセットになってるってこと?
 2枚ずつが鏡対称になってるってことじゃない?

(d)45度、36度、60度の角度ができた理由をそれぞれ説明できるかな。

・45度は簡単。
 折り紙を半分に折って180度、もう半分に折って90度、更に折って45度。これでいい?
・60度もわかった。
・等間隔の4本の線を、こんな風に折り曲げたとき、真ん中に正三角形ができて、
 2つで60度だから、1つ30度。わからない? 点線のところに正三角形があるでしょ。
・36度がわからない。
・一緒に考えてみよう。×印のところは、どこらへんにある?
・左から4分の1のところ。
・そうだね。次に折り曲げてひらいた図に、点線で三角形を描いたよ。
 これはどんな三角形かな。
・細長い直角三角形。
・もとの長方形が縦2、横4の長さとすると、直角三角形の辺の長さは3と1でいい?
・そのとおり。実は、直角を挟む辺の比が3:1の直角三角形の角の一つは約18度なんだ。
・わかった。さっき折り返してひろげたから、ここに二等辺三角形が隠れてる。
 18度+18度で、4本の実線の角はひとつ36度になる。
・そうだね。対称な模様を折り紙でつくるのには工夫がいるんだね。じゃあ、・・・

(e)120度(1/3回転)の回転対称をもつ図形をつくるにはどんな折り方をすればよいかな。

・図形が120度まわって同じになるということは、折ったときに60度の角度をつくればいいんじゃない。
・さっきの黄色の折り紙で折った角度の倍ってことね。
・同じように折ったら、・・・ だめだ。30度になっちゃう。
・途中まで同じなんだけど、左の端を右の線に重ねてみたらどうかなあ。
・真ん中の線の下を固定して、左の下端を右の線の上にもっていくわけね。
・おお、正三角形ができるじゃん。
・確かに、60度ができた。
・よくできたね。じゃあ、これを使って、次のような模様をつくってみよう。
 どんな形になるかな。
・なにこれ? さっぱり分からん。
・「工場」のマークみたいな。
・あるある。「発電所」みたいな。ああっ。
・これ、知ってるで。「京都市」のマークや。
・みんないい話し合いができたね。今日はこれでおしまいにしよう。

2022年2月26日土曜日

折り紙で模様づくり(1)

(1)予想する・やってみる

(a)折って切ってひろげる(その1)

折り紙を次のように折り、図のような絵を描いて切ってみる。これをひらくとどんな図形が出てくるだろうか。


(b)折って切ってひろげる(その2)

折り紙を次のように折り、図のような絵を描いて切ってみる。これをひらくとどんな図形が出てくるだろうか。


(c)折って切ってひろげる(その3)

折り紙を次のように折り、図のような絵を描いて切ってみる。これをひらくとどんな図形が出てくるだろうか。


2022年2月25日金曜日

団子から考える(4)

双対多面体は、「面の重心を新たな頂点とし、辺で接する面の重心同士を辺で結び(したがって辺の数は変わらない)、頂点で接する面の重心を結ぶ多角形を面とする」(ウィキペディア)という。
確かめてみると、(昨日の写真で)左の立体の面の重心を結んで新たな多面体をイメージすると、右の立体の面の形、頂点に集まる面の数など、ちゃんと成り立っていることがわかる。頂点の数と面の数の入れ替わりも確認できる。

一つ、気になる点がある。
②体心立方格子について、ブロックの「菱形十二面体(頂点14、面12)」と団子の「切頂八面体(頂点24、面14)」では、「面12」と「頂点24」となっており、入れ替わりの数値が合っていないのだ。

ここで、「並べた団子をつぶす(2)」での発見を思い出したい。体心立方格子のブロック構造を調べたとき、初めは「四方六面体」(同じ二等辺三角形が24枚集まってできる二十四面体で、頂点14、面24をもつ)になると考えたが、結果的に「菱形十二面体」になったと説明した。菱形十二面体は、四方六面体の特殊な場合であると考えられる。ここで、フラットである菱形を2枚の二等辺三角形に分けて、その重心を点として結んでいくと、ちゃんと双対の関係が現れ、右側の立体(切頂八面体)の面の形・数が現れることがわかる。

・体心立方格子について
 ブロック構造:菱形十二面体(頂点14、面12) 四方六面体」(頂点14、面24)
 つぶれた団子:切頂八面体(頂点24、面14)

なぜ、このような美しい双対関係が表れるのだろうか。
「団子をつぶす」行為は、団子同士の縄張り争いと考えることができる。
たとえば、平面上の3点に城を構えた3人の王がいて、それぞれの国の領土を主張したとする。城からの距離に偏りがでないように土地を分けようとすれば、下のような色分けで境界線を引くことになるだろう。


3点に囲まれた中央に、もう一人王がいた場合はどうだろう。それは、今回の「並んだ団子をつぶす」の条件に似ている。中央の領域は国でなくても、3つの王国の互いの中立地帯と考えてもいい。


全体の領土が3つの城がつくる三角形の内側だけに限られた場合は、こんな感じだろうか。


空間においても、ブロック構造の端にいる王が内部を取り合いつつ、中央に中立地帯を残すと考えてみよう。
たとえば、四面体の内部を4頂点にいる王たちが分割するならば、中央に上下逆さの四面体の形をした領域が現れるだろう。


また、たとえば、正八面体の内部を6頂点にいる王たちが分割するならば、立方体の領域が現れるだろう。


いずれの場合も、頂点の数(王の数)だけ、新しい領域の境界平面が現れることになる。

格子構造を調べる中で、偶然見つけた「双対」関係であったが、たまたまそうなったのではなく、このような理屈で必然のものであったといえる。また、「多面体の頂点と平面が入れ替わる」現象(結果)だけに注目するのでなく、そもそも「双対」とはどういう意味を持つのか、格子構造に照らして説明しようとする態度を大事にしたい。見方を変えれば、格子構造のブロック構造が分かれば、これに圧をかけたときの中央の球(団子)のつぶれ方が推測できるということである。もちろん、その逆を推測することも可能だ。

まだまだ、新たな疑問が湧いてきたり、不十分なところを補う必要があったりするのだが、ビー玉がらみの話題はこれで一区切りとしよう。

2022年2月24日木曜日

団子から考える(3)

「ビー玉を収める」「ビー玉を積む」「並べた団子をつぶす」でいろいろ調べていくうちに、新たな気づきがあった。その一つを紹介したい。

それぞれの格子構造を説明するため、その構造のモデルとしてビー玉のブロックをつくった。そして、それを覆う多面体の「ケース」を考えてきた。

「単純立方格子」の多面体ケースについては、ここで初めて取り扱う。


きれいに並んだ球を眺めると、単純立方格子構造の基本ブロックは、立方体でよいと思うかもしれないが、これまで各ブロックを定める際には、1個の球に注目してその周辺の球の配置を表すものとして作成してきた。たとえば、
体心立方格子は、1個を取り囲む14個の球によるブロック
面心立方格子は、1個を取り囲む12個の球によるブロック
稠密六方格子も、1個を取り囲む12個の球によるブロック という具合である。

単純立方格子の場合は、注目する1個に対して直交する3軸方向に隣り合うビー玉6個が取り囲んでいると見てよいだろう。(圧がかかったとき、中央の球が影響を受けるのはこの6方向の球である。)
前から、横から、上から見た並びが、どれも十文字に見えるこの形を、最小の平面で覆う多面体ケースを考えるとすれば、それは正八面体になる。


ということで、4種類の格子構造のデータがそろったので、整理してみよう。
まず、ブロック構造を表す多面体は、以下の通りであった。

①単純立方格子:正八面体
②体心立方格子:菱形十二面体(四方六面体)
③面心立方格子:立方八面体
④稠密六方格子:同相双三角台塔

また、各格子構造に並べた団子をつぶしてできた多面体は次の通りであった。

①単純立方格子:立方体
②体心立方格子:切頂八面体
③面心立方格子:菱形十二面体
④稠密六方格子:菱形台形十二面体

これらの立体について、各格子構造ごとに写真を並べて比べてみる。

①単純立方格子

ブロック構造:正八面体(頂点6、面8)
つぶれた団子:立方体(頂点8、面6)

②体心立方格子

ブロック構造:菱形十二面体(頂点14、面12)
つぶれた団子:切頂八面体(頂点24、面14)

③面心立方格子

ブロック構造:立方八面体(頂点12、面14)
つぶれた団子:菱形十二面体(頂点14、面12)

④稠密六方格子

ブロック構造:同相双三角台塔(頂点12、面14)
つぶれた団子:菱形台形十二面体(頂点14、面12)

いずれの場合も、それぞれの「ブロック構造」の多面体と、「つぶれた団子」の多面体は、双対多面体の関係(立体の頂点と面を入れ替えでできる立体の関係)になっていることに気づくだろうか。

どうしてそうなるのか考えてみた。でも、その話は明日に。

2022年2月23日水曜日

団子から考える(2)

③面心立方格子の場合


この団子は、菱形十二面体になるのであった。
菱形十二面体の体積の求め方もさまざま考えられる。

ここでは、「並べた団子をつぶす(2)」で見つけた「底辺1・高さ(√2)/2の二等辺三角形24枚で、四方六面体をつくろうとしたら、菱形十二面体になった」という考え方を使おう。


菱形十二面体は、立方体の6つの各面にこの二等辺三角形が4つ集まった屋根(ビラミッド)をつけたものと考えればよい。菱形十二面体の一辺の長さを1とすると、中央の立方体の一辺は、菱形の短対角線なので、2/(√3)。ピラミッドの高さは、h^2=1^2-((√2)/(√3))^2=1/3 より、h=1/(√3) になる(これは立方体の一辺の半分)。
したがって、全体の体積は、(2/(√3))^3+1/3×(2/(√3))^2×(1/(√3))×6=8/(3√3)+8/(3√3)=(16√3)/9≒3.08 となる。
実は、このビラミッド型の立体は、とがった方を内側にして6個くっつけると、中央の立方体と同じものになる。


一方、菱形十二面体の表面積は、短対角線が2/(√3)、長対角線が(2√2)/(√3)である菱形が12枚集まっていることから、1/2×2/(√3)×(2√2)/(√3)×12=8√2≒11.31 となる。

したがって、菱形十二面体の「表面積/体積」は、8√2÷(16√3)/9≒11.31÷3.08≒3.67

④稠密六方格子の場合


この団子は、菱形台形十二面体になるのだった。
稠密六方格子のビー玉ブロックは「同相双三角台塔」であるが、これは面心立方格子ブロックの「立方八面体」の下半分を60°回転させたものであった。同様に、菱形台形十二面体もまた、菱形十二面体の下半分を60°回転させたものと考えることができる。
すなわち、体積も表面積も、菱形十二面体と同じ値になる。

したがって、菱形台形十二面体の「表面積/体積」は、8√2÷(16√3)/9≒11.31÷3.08≒3.67

以上のことを整理しよう。
①単純立方格子(立方体)                   6.00
②体心立方格子(切頂八面体)            2.37
③面心立方格子(菱形十二面体)        3.67
④稠密六方格子(菱形台形十二面体) 3.67

正二十面体や球の方がこの値は小さくなるのではないか、という意見があるかもしれないが、ここでは、隙間のない、壁一枚で連なる、同じ大きさの部屋を想定しているので、空間充填立体のこれらの中に解を見つけるべきと思われる。
今回の結果からみると、たくさんの連続する部屋をつくるとき、壁の材料をできるだけ少なくしながら広い空間を確保するためには、「切頂八面体」が最も相応しく、その部屋の配置構造は「体心立方格子」構造になることがわかった。

茨城県の「水戸市森林公園」にはこの構造の遊具が設置されているらしい。外側から見るばかりでなく、内側の様子もわかって楽しい。なんとなく「4次元の蜂」になった気分だ。

https://mama-fuente.jp/article/childpark/4636

2022年2月22日火曜日

団子から考える(1)


これは、1983~1984年に日本経済新聞に連載された「暮らしの中の数学」(中村義作先生)の切り抜きである。(今も大切に保管している。)
内部の面積が同じ多角形で平面を敷きつめたとき、周囲の長さがいちばん短くなる多角形は「正六角形」であるが、これを空間に拡張したとき、内部の体積が同じで最も表面積が小さくなる立体はどのような立体(多面体)か、という問題である。

この間「並べた団子をつぶす」で探ってきた、隙間のない空間充填立体の4種類について、これを調べてみよう。
広い空間を形成しつつ壁の材料を最も少なくするという経済性を比べるには、単位体積当たりの表面積の値を求めればよいだろう。(値が小さい方がより経済的ということ。)

①単純立方格子の場合


つぶれた団子の形は、立方体になる。
一辺の長さを1としたとき、立方体の体積は1で、表面積は6 なので、「表面積/体積」は、6÷1=6 となる。

②体心立方格子の場合


この場合のつぶれた団子の形は、切頂八面体になる。
切頂八面体の体積の求め方は、さまざまに考えられる。

(a)正八面体から正四角錐を削る方法

切頂八面体の一辺の長さを1とする。これに、辺の長さが1の正四角錐を6個つけると、辺の長さが3の正八面体ができる。正八面体は、正四面体を2つ合わせた形なので、辺の長さが3であるとき、その体積は、(1/3)×3×3×(3(√2)/2)×2=9√2 となる。ここから、辺の長さが1の正四角錐6個を引けばよいので、9√2ー(1/3)×1×1×((√2)/2)×6=8√2 となる。

(b)立方体を2分割したものを8つ合わせる方法

立方体の6つの辺の中点を結んで、切り口が正六角形になるように切断すると、この2つは合同な立体になる。これを背中合わせに4つくっつけると、切頂八面体の上半分の立体になる。つまり、切頂八面体の体積はこの立方体の体積の4倍ということになる。この立方体の一辺の長さは、正六角形の一辺を1とするとき、√2になるので、(√2)^3×4=8√2 となる。
 
切頂八面体の表面積は、一辺が1の正方形が6個と、一辺が1の正六角形が8個なので、1×6+(3√3)/2×8=6+12√3 になる。

したがって、切頂八面体の「表面積/体積」は、(6+12√3)÷8√2≒26.78÷11.31≒2.37

長くなりそうなので、この続きは明日に。

2022年2月21日月曜日

積んだ団子をつぶす(4)

④[稠密六方格子]の場合

稠密六方格子の構造についても、ビー玉を積んで表す方法は何通りか考えられる。

(a)7-3-7型
上面と底面に正六角形状の7個、その間に3個の球を配置する稠密六方格子の典型的な構造。

(b)3-7-3型
上記の「7-3-7型」の積み方を変えたもの。中央の赤い球に着目すると、上に3個、周囲に6個、下に3個の計12個の球に囲まれた(接した)構造になっている。「面心立方格子」とよく似ているが、1層目の緑色と3層目の紫色の球が同じ方向を向いた正三角形になっており、これが上と下から赤色の球を挟むので、やや対称性を欠くことになる。

押しつぶした団子の形を(b)の状態から考える。
面心立方格子の場合と同様に、周囲の青の層から圧迫された中央の球(赤色)は、側面を六角柱のように変形させられる。これを上から3つの紫色の球が押さえつけるので、とんがりの3面屋根が形成され、下から緑色の球が押し返し、やはりとんがりの3面床を形成すると考えられる。しかし、今回は、上下の正三角形の向きが同じであるので、とんがり屋根ととんがり床の向きが鏡対称になり、側面の上辺と下辺が平行でなくなると思われる。
ことばで説明するのは難しいので、これを厚紙でつくってみると。


これは、菱形台形十二面体と呼ばれ、菱形6枚と台形6枚から構成され、3面が集まる頂点が8個、4面が集まる頂点が6個ある。上の写真は、それぞれ、<上から>、<下から>、<横から>、<4面がつくる頂点側から>見たものである。   
また、菱形台形十二面体も一種類だけで空間を充填することができる。

実際に、いくつかの菱形十二面体を積み重ねてみよう。
菱形十二面体と同様に、3つの立体の凹みに1個が乗るので、四面体構造になるのだが、異なるところは、1層目と2層目で屋根の3枚の菱形の向きが反転している(60°回転ともとれるが)ことだ。また、横から見ると、側面の台形の様子がよく分かる。

1個の周りに6個の立体が接する構造も、菱形十二面体と同様である。上から見たときには、菱形十二面体と菱形台形十二面体の区別はつかない。


菱形十二面体の場合には、4個の接続した立体の上に1個を積む、あるいは、上下左右を挟んだ十文字の形に並べることができたが、菱形台形十二面体では、それができない。

そして、菱形十二面体と菱形台形十二面体の決定的な違いは、この立体を3段に重ねたときに明らかになる。

<菱形十二面体の場合>
下の写真のように、3つの立体をくっつけて並べるとき、上からみた形と下から見た形が異なり、2段目を重ねるときには、その形が入れ替わる(同じ形がずれる、といってもよい)。3段目をその上におくとき、1段目の真上と異なる位置に凹みが現れるので、3段の立体の位置は真上方向にそろわない構造であることが分かる。



<菱形台形十二面体の場合>
3つの立体をくっつけて並べるとき、上から見た形と下から見た形は同じになる(一種類しかない)。そして、2段目を重ねたとき、2段目の凹みは必ず1段目の立体の真上の位置にくるので、3段目は1段目の真上にしか置けない。つまり、2層パターンが繰り返される形になるのだ。


参考までに、菱形台形十二面体(左)と菱形十二面体(右)の展開図は次の通り。


2022年2月20日日曜日

積んだ団子をつぶす(3)

 ③[面心立方格子]の場合

面心立方格子の構造をビー玉を積んで表す方法は何通りか考えられる。

(a)5-4-5型
立方体の8頂点と6面に球を配置する面心立方格子の典型的な構造。(注目する球の周辺状況が分かりにくい。)

(b)4-5-4型
上記の「5-4-5型」の積み方を変えたもの。中央の赤い球に着目すると、上に4個、周囲に4個、下に4個の計12個の球に囲まれた(接した)構造になっている。


(c)3-7-3型
上記の「4-5-4型」を斜めに見たもの。(b)の右側のイラストと(c)のイラストを見比べると同じ構造であることがわかる。中央の赤い球に着目すると、上に3個、周囲に6個、下に3個の計12個の球に囲まれた(接した)構造になっている。

注目する赤い球が特殊な位置にある訳ではない。全ての球がこのような同じ周囲の条件を有しており、連続して配置されている。また、(a)も(b)も(c)も、一つの球に対して、12個の球が空間的に均等な方向に配置され、最密な状態で接している。

押しつぶした団子の形について、(c)の状態から考察してみると、周囲の青の球から圧迫された中央の球(赤色)は、側面を六角柱のように変形させられるだろう。これを上から3つの緑の球が押さえつけるので、とんがりの3面屋根が形成されるだろう。同様に、下から黄色の球がやはりとんがりの3面床(下に膨らむ)を形成すると考えられる。このとんがり屋根ととんがり床の3枚の面(菱形)の配置は、上下反対(60度回転対称ともいえる)で、全体として、バランスのとれたスタイルになると考えられる。
実は、この立体は「菱形十二面体」になる。


対角線が 1:√2の菱形12枚で構成され、3面が集まる頂点が8個、4面が集まる頂点が6個ある。上の写真は、それぞれ、<上から>、<下から>、<横から>、<4面がつくる頂点側から>見たものである。   
菱形十二面体も一種類だけで空間を充填することができる立体である。
実際に、いくつかの菱形十二面体を積み重ねてみよう。正三角形(正六角形)、正方形などの積み重ねバリエーションが可能である。