2022年9月30日金曜日

シャボン膜の形と長さ(8)

③-(b) 30°対辺の組の場合

シャボン膜は、120°で交わる三叉路が3つつながった折れ線になる。


このシャボン膜の作図は、次のように行った。


正三角形AEFと正三角形CDGを描く。さらに、BGを一辺とする正三角形BGHを描き、2点FHを結ぶ。
このFHを分解すると、FI=AI+IE、JH=JB+JG となり、


さらに、LG=LC+LD となる。
すなわち、シャボン膜は7つの線分から成り立つが、分解の逆をたどれば、線分FHの長さに等しいことが分かる。
その長さは、FK=2√3、HK=3 より、FH=√21 になる。

2022年9月29日木曜日

シャボン膜の形と長さ(7)

③ 五角形の場合

正六角形の6つの頂点から5つを選んで五角形をつくる。この場合、野球ベースのような形の1種類である。


しかし、この五角形に対するシャボン膜の張り方は一通りではなさそうだ。
四角形の場合は、対辺の組が2通り考えられたが、五角形の場合は、「対辺+1点」の組合せが3通り考えられる。


これについて、プラ板であたりをつけてみると、


(a)については、異なるプラ板の3直線が、五角形の内部で互いに120°をなすことはできず、その交点は五角形の頂点に移動すると思われる。
(b)については、三叉路を3箇所に配置することができ、バランスがとれそうである。
(c)についても、三叉路を3箇所に置き、バランスをとることができそうである。

これらについて、注目する「対辺」(の延長)のなす角の違いによる名前をつけておこう。
(a)は「0°対辺の組」、(b)は「30°対辺の組」、(c)は「60°対辺の組」というように。

③-(a) 0°対辺の組の場合

シャボン膜は、五角形の短い4つの辺に沿った折れ線になる。


五角形のシャボン膜の作図は、次のようにやればよいだろう。
注目した対辺を一辺とする正三角形をそれぞれ描き、一方の正三角形と残りの1点がつくる線分で新たな正三角形を描く。新たな正三角形ともう一方の正三角形のそれぞれ外側の頂点同士を結ぶことで作図する。


「0°対辺の組」の場合は、五角形の辺に沿っているので、新たに作図する線分はでてこないが、上図のように変形していったとき、「A→B→C→D→E」は、2点H,Gを結ぶことを示し、これがこの場合の最小であるといえる。また、その長さは「4」になる。

2022年9月28日水曜日

シャボン膜の形と長さ(6)

②-(c) 長方形の場合

シャボン膜は、120°で交わる三叉路が2つつながった折れ線になる。


左はシャボン膜の実験、中央は簡易作図、右はプラ板による予想。
封筒のようにも見えるし、正六角形が並んだ境界線を拡大したようにも見える。

やはり、一対の向かい合う辺の外側に正三角形をつくって、外側の2頂点を結ぶことで、シャボン膜の一部が現れる。

また、シャボン膜「AF+BF+FG+DG+CG」の長さは、EF+FG+GH、すなわち、EHの長さに置き換えられるので、その長さは、EI=√3、IH=3 より、EH=2√3 になる。
右図のように正三角形の中にできたシャボン膜を2個つなぎ合わせたという解釈もでき、((√3/3)×3)×2=2√3 としても求められる。

では、長い方の向かい合う2辺を選んだ場合はどうなるだろうか。


上図のように、120°で交差するはずの三叉路が一点で交わり、同時に60°の角を有することになる。
この場合、AB側とCD側に膜が引っ張られて、先ほどの封筒の形のシャボン膜に落ち着くと思われる。

今回の実験では、正六角形の頂点の位置に柱を立てた器具を使っているため、長方形に関して1種類のシャボン膜の形状しか見られなかった。次のような長方形(AB<AD<√3AB)で実験を行ったならば、このようなシャボン膜も見られるに違いない。


2022年9月27日火曜日

シャボン膜の形と長さ(5)

②-(b) たこ形の場合

シャボン膜は、120°で交わる三叉路が2つつながった折れ線になる。


三角形におけるフェルマー点の作図については、前回説明した通りだが、四角形においても同じように考えることができる。
向かい合う辺のそれぞれの外側に正三角形を描き、新しくできた頂点同士を結ぶとき、その線分の一部(オレンジ色)は最短経路(シャボン膜)の一部として現れ、また、その頂点間の距離はシャボン膜の全体の長さに等しくなる(オレンジ色の部分が現れないような場合はダメだけど)。更に詳しくみていこう。


3方向に均等の力で引っ張られた綱は互いに120°(全円の3等分)をなすようにバランスをとると考えて、この形が現れるような綱引きを図の上に重ねて確かめてみよう。
回転扉のような3本の直線が1点で交わる図(赤線)をプラ板に描き、これまでの図に当ててみた。


三角形の場合、3頂点を通るようにプラ板を重ねる置き方は、それぞれ1通りに決まる。
四角形の場合には、これが2枚必要になるが、たとえば、「たこ形」の四角形の頂点に当てるとき、下左図のように適当な置き方もできるが、下右図のようにプラ板上の適当な直線が一直線になるように重ねると、シャボン膜と同じような形が現れる。


では、重なる直線はどこに現れるのだろうか。
下の図において、直線FIを共有線とし、点Fと点Iにおける3本の赤い直線はそれぞれ120°で交わるとする。


△ABFの外接円を描き、IFの延長線と交わる点をEとすると、△ABEは正三角形になる。(∵ ∠AFE=∠ABE=60°、∠BFE=∠BAE=60°)
同様に、△CDIの外接円とFIの延長線と交わる点をHとすると、△CDHも正三角形になる。
つまり、120°で綱引きをする場合、必然的に、四角形の対辺にくっつけた2つの正三角形の頂点同士を結ぶ直線は、共有線に重なるのだ。

また、シャボン膜の合計の長さは、この線分EHの長さに等しくなる。
したがって、今回の「たこ形」におけるシャボン膜の長さは、正六角形の一辺を1とすると、EK=(3√3)/2、KH=5/2 より、EH=√13 になる。

なお、対辺の選び方について、もう一方の組もありうるのだが、これは裏返しにすると同じ図形なので、結果も同じ。


2022年9月26日月曜日

シャボン膜の形と長さ(4)

② 四角形の場合

正六角形の6つの頂点から4つを選んで四角形をつくる。このときできる四角形の形は次の3種類。


②-(a) 等脚台形の場合

シャボン膜は、台形の3つの短辺をなぞる折れ線になる。


三角形の場合と同様に、一つの辺を共有する正三角形を四角形の外側に描く。さらに、四角形の場合には、向かい合う対辺のそれぞれに正三角形を配置して考える。


図のように、2点E,Fを結ぶと、その線分上に2点B,Cが含まれるようになるので、これが最短の長さになる。また、∠ABC=∠BCD=120°の関係が見られる。
詳しく説明すると


台形の内部に適当な点G,Hを設けて、AG+BG+GH+CH+DHが最短になるような経路を考えたとする。GHを短くすれば、3辺をなぞる経路より短くなるのではと探ってみても、E→I→G→H→J→Fの経路は、E→B→C→Fの経路よりも長くなってしまうのだ。

したがって、この図形の頂点に配置された4点を結ぶ経路としては、AB+BC+CDの3辺の和が最小で、その長さは「3」となる。

2022年9月23日金曜日

シャボン膜の形と長さ(3)

①-(c) 正三角形の場合

シャボン膜は、正三角形の重心(内心、外心、垂心)と3頂点を結んだ三つ叉の形になる。


回転ドアの3枚ガラスのような、とてもバランスのとれた形である。
この形が今回の条件下での「最短」であることを示すため、辺ABで隣接する正三角形ABDと、正三角形AEFを考える。


AE+BE+CEを最小にするには、DF+FE+ECが最小になるように点Eを定める必要がある、すなわち、D,F,E,Cを一直線上に置けばよい。
したがって、点Eは、∠AEC=∠BEA=120°となる点になり、正三角形ABCの重心、内心、外心、垂心に一致する。
このときの膜の長さは、正六角形の一辺の長さを1とすると、「3」になる。

前回の「フェルマー点をみつけてみよう」のWeb教材で、△ABCを正三角形にして点Eを動かしてみた。重心あたりに点を近づけるとき、4点D,F,E,Cが一直線に並ぶことが分かる。


2022年9月22日木曜日

シャボン膜の形と長さ(2)

①-(b) 直角三角形の場合

シャボン膜は、三角形の内部の1点と3頂点を結んだ三つ叉の形になる。


この「内部の1点」がどこに位置するかが重要である。
図のように、ABを一辺とする正三角形ABD、および、適当な点Eに対してAEを一辺とする正三角形AEFを描く。


△AEBと△AFDは合同な三角形になるので、点Eから3頂点に引いた線分の和は、BE+AE+EC=DF+FE+ECと表せる。
これが最小になるのは、D,F,E,Cが一直線に並ぶときなので、∠AEC=120°、∠DFA=∠BEA=120°のときと分かる。
このような点Eは、フェルマー点と呼ばれている。

このシャボン膜の長さは、正六角形の一辺の長さを1とすると、CG=√3/2、DG=5/2より、CD=√7≒2.6 になる。

フェルマー点を作図するには、次のような方法がある。


△ABCの2辺を選び、それぞれの辺を一辺とする正三角形について、①それぞれの外心円の交点を求める、または、②正三角形をくっつけた四角形ACBDと四角形ABCHの対角線の交点を求める。

動的幾何学ソフト「Cinderella」を使って、「フェルマー点をみつけてみよう」(https://www.fumita.org/p/bycinderella.html)というWeb教材を作ったので、リンク先にて実際に触ってみてほしい。

これを動かしてみると、①(a)で取り上げた∠BAC=120°となるような三角形では、フェルマー点(E)は頂点Aに位置することも分かる。


2022年9月21日水曜日

シャボン膜の形と長さ(1)

うちの子が小学生だったとき、夏休みの自由研究で「シャボン膜」の実験をしたことがあった。
一緒に実験道具をつくっていたのが懐かしい(3枚の写真は2004年のもの)。


アクリル板に6つの穴をあけたものを2枚用意し、ボルトとナットで六角支柱を挟んで、1.5cmの隙間をもつ平行板をつくる。


この6本の柱を適当に間引きして、そこにシャボン膜を張って、できた膜の形を調べようという実験である。

① 三角形の場合

正六角形の6つの頂点から3つを選んで三角形をつくる。このときできる三角形の形は次の3種類。(回転や裏返しで同じになるものを除く)


①-(a) 二等辺三角形の場合

シャボン膜は、三角形の短い2辺上の折れ線になる。


シャボン膜は、表面の面積を小さくしようとする力(水の表面張力)があるので、3点を結ぶ経路の和を最も小さくしようとする、という。
本当にこの形が最小といえるだろうか。

下図のように、△ABCの内部に適当な点Eをとって調べてみる。


ABを一辺とする正三角形ABD、BEを一辺とする正三角形BEFをつくるとき、
AE+BE+CE=DF+FE+ECとなる(∵ △AEB≡△DFB)。
すなわち、点Dから点Cに至る経路として、「D→F→E→C」よりも「D→B→C」の方が短いことが分かる。また、「D→B→C」は、2点DCを結ぶ直線上なので最短といえる。
よって、この図形の場合、点Eは点Bの位置に置くのが最良ということになる。

結論としては、上右図のように、ABを一辺とする正三角形ABDを描くとき、線分CDが最短になることから、シャボン膜は、「AB+BC」の折れ線となる。
なお、ABとBCのなす角は「120°」であり、正六角形の一辺の長さを1とすると、この膜の長さは「2」になる。

2022年9月20日火曜日

蚊取り線香の真ん中(7)

では、芯に筒がはいっているトイレットペーパーの場合はどうだろうか。


トイレットペーパーを上から見たときの外側の円の半径を a(cm)、内側の芯の半径を b(cm)とするとき、使い始めから終わりまでのちょうど中間に位置する一巻き(エンジ色の線)は、中心から何cmのところにあるか。


エンジ色の円の半径をx(cm)とすると、下図の赤色のドーナッツの面積は、π(x^2)ーπ(b^2) 、
黄色のドーナッツの面積は、π(a^2)ーπ(x^2) で、これが等しくなればよい。
π(x^2)ーπ(b^2)= π(a^2)ーπ(x^2)
2(x^2)=a^2+b^2
したがって、x=√((a^2+b^2)/2) となる。


たとえば、トイレットペーパーのロール全体の半径が 8cm(a)で、芯の半径が 2cm(b)とすると、xは、√((64+4)/2)=√34≒5.83 と計算できる。
赤色の厚みと、赤と黄を合わせた厚み(トイレットペーパーの厚み)の比は、3.83:6 となり、64%くらいのところに位置する。芯のない場合の71%に比べてやや小さくなった(相対的に内側に寄った)。

さて、今回の場合も、計算なしでエンジラインを見つける方法はあるだろうか。


小円の半径と大円の半径で直角三角形をつくり、その斜辺を一辺とする正方形を描く(一辺の長さは、√(a^2+b^2)である)。その正方形の対角線の交点が、エンジライン上の点になる(対角線の半分は、一辺の 1/√2 倍になるから)。
芯の半径が大きくなると正方形は更に傾くが、その方向きは最大でも45°より小さい。また、芯の半径が 0 のときは、前回の例(芯のない場合)に一致する。

こんな方法もある。
小円の接線とエンジライン(円)の接線を描くとき、ドーナッツ上の接線の長さが同じであれば、それぞれのドーナッツ面積は同じになるので、そこからエンジラインを推測するという方法だ。


なぜなら、上図のように接線の長さの半分をそれぞれA、Bと表すと、
赤色のドーナッツの面積は、π(x^2)ーπ(b^2) =π(x^2ーb^2)=π(A^2) と表せ、
黄色のドーナッツの面積は、π(a^2)ーπ(x^2) =π(a^2ーx^2)=π(B^2) と表せるので、
2つの面積が等しいことと、AとBが等しいことは、同値となる。

2022年9月19日月曜日

蚊取り線香の真ん中(6)

蚊取り線香ではないが、渦巻きつながりで考えた。
トイレットペーパーの真ん中をどうやって見つけるか。

まずは、芯なしの詰まったトイレットペーパーの場合で考える。


トイレットペーパーを上から見たときのロール円の半径を a(cm)とするとき、使い始めから終わりまでのちょうど中間に位置する一巻き(下図のエンジ色の線)は、中心から何cmのところにあるか。


トイレットペーパーの紙の厚みが一定と考えると、紙の長さはロールの面積に置き換えて考えることができる。
つまり、エンジ色の円の半径をx(cm)とすると、その内側の面積は、π・x^2 で、これの2倍が、もとの大きな円の面積 π・a^2 と等しくなるところが真ん中になる。
2・π・x^2=π・a^2
x^2=(a^2)/2
したがって、x=a/(√2) となる。
2つの円の半径の比は、1:1/√2 なので、7割くらいのところになる。


物差しで長さを測ってこのエンジラインを見つけてもよいが、「√2で割る」というのは、次のような図形的操作をほどこすことと同じなので、こんな風に見つけることもできる。

トイレットペーパーの半径を1辺とする正方形をイメージして、その対角線の交点の位置を定めれば、ここがエンジライン上の点ということになる。


2022年9月16日金曜日

蚊取り線香の真ん中(5)

渦巻きの巻き数がもっと多いものをみつけた。長時間燃え続けるお線香である。

前回と同様、2つを重ねてみると、隙間のない円ができるので、線香の幅と隙間の幅が一定のアルキメデスのらせんになっていると考えよう。

片方の線香をたこ糸に置き換えてみると、その長さは実に198cmもあった。

ひもの真ん中をに印をつけてもう一度巻き直し、線香のセンターポイントを求めると、下図の赤点の位置になった。線香は11周のアルキメデスのらせんで、中心から先端までの距離は、5.7cmであった。

前回と同様に、積分で長さを求めてみよう。
 r=aθより、5.7=a×22π ∴ a≒0.082
 Integrate[0.082 Sqrt[1+θ^2],{θ,0,22π}]
ひもの長さ198cmに近い値が得られた。

センターポイントは、内側からおよそ7周と3/4のところなので、θを0から15.5πまでの積分をしてみると、
ほぼ半分の長さになっていることが確かめられた。

この線香であるが、金網の上ではすぐに消えてしまい、宙に浮かせた形で燃やしてみたが最後まで燃えず、7時間後の計測時には火の進行が止まっていた。
ちなみに、センターポイントを通過したのは、着火からおよそ5時間30分後であったので、最後まで燃えるなら、11時間ほど燃え続ける計算になる。

以下は1時間ごとの記録である。
0時間後(着火)残り11周
1時間後(右から撮影)残り10.5周
2時間後(前から)残り9.9周
3時間後(前から)残り9.3周

4時間後(左から)残り8.7周
5時間後(上から)残り8.1周
6時間後(上から)残り7.4周
7時間後(上から)残り7.2周(途中で消えていた)